雑記帳
僕用勉強ノート 「量子力学」の巻

通常の水素の方程式を2粒子系に対するシュレーディンガー方程式を出発点に導出する。

(書きかけ)
前書き
このページで説明を行うのは、水素の方程式というスタートラインに立つまでの道のりであり、方程式を実際に解く部分については次回行う。
また圏論的な見方を積極的に活用するというこのサイトの方針に伴い、変数ではなく写像そのものを重要視するということを意識して議論を進めていく。
これによって例えば、「写像」と「写像の取る値」をくどいほど明確に区別したり、「どの変数で微分するのか」ではなく「何番目の入力について微分をするのか」というようにして微分を考えたりなどしていくが、それらはそういった理由により意図して行われているものであるということを留意しておいてほしい。
水素原子を解析する方程式に辿り着くまで...
イメージ
出発点となる大本の方程式 (2粒子系に対するシュレーディンガー方程式)
iCψt(r1,r2,t)=22M(12Cψ)(r1,r2,t)22m(22Cψ)(r1,r2,t)14πε0e2r1r2Cψ(r1,r2,t)
(..)
定常状態を求める方程式に書き換える
シュレーディンガー方程式から与えられた系での定常状態を求める方程式を誘導する。」で説明した通り、上で与えたシュレーディンガー方程式で状態発展を追いかけることができる系の定常状態を求める方程式は、
Cψ(r1,r2,t)=eEitCa(r1,r2)ECa(r1,r2)=22M(12Ca)(r1,r2)22m(22Ca)(r1,r2)14πε0e2r1r2Ca(r1,r2)
(..)
原子核の位置を基点とする電子の相対位置に対して振幅を定める関数についての方程式に書き換える
η(d)=(Cajr)(r1,d)Eη(d)=22μ(2η)(d)e24πε0dη(d)
(..)
球面の式を通して間接的に位置を指定できるようにした関数に対する方程式に書き換える
球面の式が合成された写像の微分が満たす関係式を求める
任意の基準点を r0 とし、球面の式を通して空間内の一点を r0 からの距離と方向を意味する入力から指定する関数を j:R3R3 とする。
具体的には、j
考えている状況のイラストレーション
  • s: 基準点からの距離
  • θ1: 基準点から目標位置までの変位ベクトルの e1,e2 が張る平面上への射影ベクトルと e1 とのなす角
  • θ2: 基準点から目標位置までの変位ベクトルの e1,e2 が張る平面上への射影ベクトルとその大本の変位ベクトルとのなす角
としたとき、以下の関係式を満たす写像である。
j(s,θ1,θ2)=r0+s{cosθ2[cosθ1sinθ10]+sinθ2[001]}
余談
位置ベクトルを「原点と指定位置を結ぶ矢印」として見たときの、その極座標表示を考えているというよりかは、「3つのパラメータを用いて位置を間接的に指定する」という見方をとっている。
また極座標表示を考える場合、θ2 を「z-軸とのなす角」として与えることが多いが、これについては後から合わせることができるため問題視する必要は無い。
ここで、「基準点からの距離」と「基準点からの方向」に分解して水素の方程式を考察できるようにするために、前節で求めた η に関する方程式を
φ=ηj
で定まる φ に関する方程式に書き換えていく。
まず j が合成された任意の関数 f の微分
i(fj)
がどういった形になるのかを、全ての i について調べると以下のようになる。
(1(fj))(s,θ1,θ2)=[cosθ1cosθ2sinθ1cosθ2sinθ2][((1f)j)(s,θ1,θ2)((2f)j)(s,θ1,θ2)((3f)j)(s,θ1,θ2)](2(fj))(s,θ1,θ2)=s[sinθ1cosθ2cosθ1cosθ20][((1f)j)(s,θ1,θ2)((2f)j)(s,θ1,θ2)((3f)j)(s,θ1,θ2)](3(fj))(s,θ1,θ2)=s[cosθ1sinθ2sinθ1sinθ2cosθ2][((1f)j)(s,θ1,θ2)((2f)j)(s,θ1,θ2)((3f)j)(s,θ1,θ2)]
行列を使ってこれらの関係式を一本の式に纏めると
[(1(fj))(s,θ1,θ2)(2(fj))(s,θ1,θ2)(3(fj))(s,θ1,θ2)]=[cosθ1cosθ2sinθ1cosθ2sinθ2ssinθ1cosθ2scosθ1cosθ20scosθ1sinθ2ssinθ1sinθ2scosθ2][((1f)j)(s,θ1,θ2)((2f)j)(s,θ1,θ2)((3f)j)(s,θ1,θ2)]
が得られる。
見やすいように、
A(s,θ1,θ2)=[cosθ1cosθ2sinθ1cosθ2sinθ2ssinθ1cosθ2scosθ1cosθ20scosθ1sinθ2ssinθ1sinθ2scosθ2]bf(s,θ1,θ2)=k((k(fj))(s,θ1,θ2)ek)B(s,θ1,θ2)=(A(s,θ1,θ2))1=[cosθ1cosθ21ssinθ1cosθ21scosθ1sinθ2sinθ1cosθ21scosθ1cosθ21ssinθ1sinθ2sinθ201scosθ2]
と置くと、
bf(s,θ1,θ2)=A(s,θ1,θ2)[((1f)j)(s,θ1,θ2)((2f)j)(s,θ1,θ2)((3f)j)(s,θ1,θ2)][((1f)j)(s,θ1,θ2)((2f)j)(s,θ1,θ2)((3f)j)(s,θ1,θ2)]=(A(s,θ1,θ2))1bf(s,θ1,θ2)[((1f)j)(s,θ1,θ2)((2f)j)(s,θ1,θ2)((3f)j)(s,θ1,θ2)]=B(s,θ1,θ2)bf(s,θ1,θ2)((if)j)(s,θ1,θ2)=ei(B(s,θ1,θ2)bf(s,θ1,θ2))(if)j=λs,θ1,θ2.{ei(B(s,θ1,θ2)bf(s,θ1,θ2))}
という関係式が得られる。
得られた関係式を方程式に適用する
先ほど得られた関係式
(if)j=λs,θ1,θ2.{ei(B(s,θ1,θ2)bf(s,θ1,θ2))}
η に関する方程式に適用していく。
Eη(d)=22μ(2η)(d)e24πε0dη(d)λd.{Eη(d)}=λd.{22μ(2η)(d)e24πε0dη(d)}λd.{Eη(d)}j=λd.{22μ(2η)(d)e24πε0dη(d)}j(λd.{Eη(d)}j)(s,θ1,θ2)=(λd.{22μ(2η)(d)e24πε0dη(d)}j)(s,θ1,θ2)Eη(j(s,θ1,θ2))=22μ(2η)(j(s,θ1,θ2))e24πε0j(s,θ1,θ2)η(j(s,θ1,θ2))E(ηj)(s,θ1,θ2)=22μ((2η)j)(s,θ1,θ2)e24πε0j(s,θ1,θ2)(ηj)(s,θ1,θ2)Eφ(s,θ1,θ2)=22μ((2η)j)(s,θ1,θ2)e24πε0j(s,θ1,θ2)φ(s,θ1,θ2)
ここで、
(2η)j=(i(i2η))j=i((i2η)j)=i((i(iη))j)
f=iη として、先ほどの関係式を適用すると
 i((i(iη))j)= i(λs,θ1,θ2.{ei(B(s,θ1,θ2)biη(s,θ1,θ2))})= i(λs,θ1,θ2.{ei(B(s,θ1,θ2)(k((k((iη)j))(s,θ1,θ2)ek)))})
(iη)j にも同じ関係式が適用できて
 i(λs,θ1,θ2.{ei(B(s,θ1,θ2)(k((k((iη)j))(s,θ1,θ2)ek)))})= i(λs,θ1,θ2.{ei(B(s,θ1,θ2)(k((k(λs,θ1,θ2.{ei(B(s,θ1,θ2)bη(s,θ1,θ2))}))(s,θ1,θ2)ek)))})= i(λs,θ1,θ2.{ei(B(s,θ1,θ2)(k((λs,θ1,θ2.{ei((kB)(s,θ1,θ2)bη(s,θ1,θ2)+B(s,θ1,θ2)(kbη)(s,θ1,θ2))})(s,θ1,θ2)ek)))})
これを整理すると
((2η)j)(s,θ1,θ2)=l{(lφ)(s,θ1,θ2){i,k{{ei{B(s,θ1,θ2)ek}}{ei{(kB)(s,θ1,θ2)el}}}}}+l{(l2φ)(s,θ1,θ2){i{{ei{B(s,θ1,θ2)el}}2}}}+2k,lk<l{(klφ)(s,θ1,θ2){i{{ei{B(s,θ1,θ2)ek}}{ei{B(s,θ1,θ2)el}}}}}
続いて各項を地道に計算していく。
(1φ)(s,θ1,θ2) の係数
i,k{{ei{B(s,θ1,θ2)ek}}{ei{(kB)(s,θ1,θ2)e1}}}=cosθ1cosθ20+(1ssinθ1cosθ2)(sinθ1cosθ2)+(1scosθ1sinθ2)(cosθ1sinθ2)+sinθ1cosθ20+(1scosθ1cosθ2)(cosθ1cosθ2)+(1ssinθ1sinθ2)(sinθ1sinθ2)+sinθ20+00+(1scosθ2)cosθ2=1s(1+sin2θ2+cos2θ2)=2s
(2φ)(s,θ1,θ2) の係数
i,k{{ei{B(s,θ1,θ2)ek}}{ei{(kB)(s,θ1,θ2)e2}}}=cosθ1cosθ2(1s2sinθ1cosθ2)+(1ssinθ1cosθ2)(1scosθ1cosθ2)+(1scosθ1sinθ2)(1ssinθ1sinθ2cos2θ2)+sinθ1cosθ2(1s2cosθ1cosθ2)+(1scosθ1cosθ2)(1ssinθ1cosθ2)+(1ssinθ1sinθ2)(1scosθ1sinθ2cos2θ2)=0
(3φ)(s,θ1,θ2) の係数
i,k{{ei{B(s,θ1,θ2)ek}}{ei{(kB)(s,θ1,θ2)e3}}}=cosθ1cosθ2(1s2cosθ1sinθ2)+(1ssinθ1cosθ2)(1ssinθ1sinθ2)+(1scosθ1sinθ2)(1scosθ1cosθ2)+sinθ1cosθ2(1s2sinθ1sinθ2)+(1scosθ1cosθ2)(1scosθ1sinθ2)+(1ssinθ1sinθ2)(1ssinθ1cosθ2)+sinθ2(1s2cosθ2)+0+(1scosθ2)(1ssinθ2)=1s2(cosθ2sinθ2sinθ2cosθ2+cosθ2sinθ22cosθ2sinθ2)=2s2sinθ2cosθ2
(12φ)(s,θ1,θ2) の係数
i{{ei{B(s,θ1,θ2)e1}}2}=cos2θ1cos2θ2+sin2θ1cos2θ2+sin2θ2=1
(22φ)(s,θ1,θ2) の係数
i{{ei{B(s,θ1,θ2)e2}}2}=1s2sin2θ1cos2θ2+1s2cos2θ1cos2θ2=1s21cos2θ2
(32φ)(s,θ1,θ2) の係数
i{{ei{B(s,θ1,θ2)e3}}2}=1s2cos2θ1sin2θ2+1s2sin2θ1sin2θ2+1s2cos2θ2=1s2
(12φ)(s,θ1,θ2) の係数
i{{ei{B(s,θ1,θ2)e1}}{ei{B(s,θ1,θ2)e2}}}=cosθ1cosθ2(1ssinθ1cosθ2)+sinθ1cosθ2(1scosθ1cosθ2)+0=0
(13φ)(s,θ1,θ2) の係数
i{{ei{B(s,θ1,θ2)e1}}{ei{B(s,θ1,θ2)e3}}}=cosθ1cosθ2(1scosθ1sinθ2)+sinθ1cosθ2(1ssinθ1sinθ2)+sinθ2(1scosθ2)=1scos2θ1cosθ2sinθ21ssin2θ1cosθ2sinθ2+1scosθ2sinθ2=0
(23φ)(s,θ1,θ2) の係数
i{{ei{B(s,θ1,θ2)e2}}{ei{B(s,θ1,θ2)e3}}}=(1ssinθ1cosθ2)(1scosθ1sinθ2)+(1scosθ1cosθ2)(1ssinθ1sinθ2)+0=0
以上を纏めると、
(2η)j=λs,θ1,θ2.{2s(1φ)(s,θ1,θ2)1s2sinθ2cosθ2(2φ)(s,θ1,θ2)+(12φ)(s,θ1,θ2)+1s2cos2θ2(22φ)(s,θ1,θ2)+1s2(32φ)(s,θ1,θ2)}=λs,θ1,θ2.{(12φ)(s,θ1,θ2)+2s(1φ)(s,θ1,θ2)+1s2{sinθ2cosθ2(2φ)(s,θ1,θ2)+1cos2θ2(22φ)(s,θ1,θ2)+(32φ)(s,θ1,θ2)}}=λs,θ1,θ2.{(12φ)(s,θ1,θ2)+2s(1φ)(s,θ1,θ2)+1s2{1cosθ2(3((cospr3)3φ))(s,θ1,θ2)+1cos2θ2(22φ)(s,θ1,θ2)}}
つまり、
Eφ(s,θ1,θ2)=22μ((2η)j)(s,θ1,θ2)e24πε0j(s,θ1,θ2)φ(s,θ1,θ2)Eφ(s,θ1,θ2)=22μ(λs,θ1,θ2.{(12φ)(s,θ1,θ2)+2s(1φ)(s,θ1,θ2)+1s2{1cosθ2(3((cospr3)3φ))(s,θ1,θ2)+1cos2θ2(22φ)(s,θ1,θ2)}})(s,θ1,θ2)e24πε0j(s,θ1,θ2)φ(s,θ1,θ2)Eφ(s,θ1,θ2)=22μ((12φ)(s,θ1,θ2)+2s(1φ)(s,θ1,θ2)+1s2{1cosθ2(3((cospr3)3φ))(s,θ1,θ2)+1cos2θ2(22φ)(s,θ1,θ2)})e24πε0j(s,θ1,θ2)φ(s,θ1,θ2)
j(s,θ1,θ2) について、η の入力が変位ベクトルであるため、基準点を 0 にとることにすれば
Eφ(s,θ1,θ2)=22μ((12φ)(s,θ1,θ2)+2s(1φ)(s,θ1,θ2)+1s2{1cosθ2(3((cospr3)3φ))(s,θ1,θ2)+1cos2θ2(22φ)(s,θ1,θ2)})e24πε0j(s,θ1,θ2)φ(s,θ1,θ2)Eφ(s,θ1,θ2)=22μ((12φ)(s,θ1,θ2)+2s(1φ)(s,θ1,θ2)+1s2{1cosθ2(3((cospr3)3φ))(s,θ1,θ2)+1cos2θ2(22φ)(s,θ1,θ2)})e24πε0sφ(s,θ1,θ2)
が得られる。
表記を従来のものに合わせる
以下のような糖衣構文を導入する。
nfsn:=1nfnfθ1n:=2nfnfθ2n:=3nfnsn[expr]:=1n(λs,θ1,θ2.{[expr]})nθ1n[expr]:=2n(λs,θ1,θ2.{[expr]})nθ2n[expr]:=3n(λs,θ1,θ2.{[expr]})
これらを使うと、方程式を以下のように書き直すことができる。
Eφ(s,θ1,θ2)=22μ(2φs2(s,θ1,θ2)+2sφs(s,θ1,θ2)+1s2{1cosθ2θ2{cosθ2φθ2(s,θ1,θ2)}(s,θ1,θ2)+1cos2θ22φθ12(s,θ1,θ2)})e24πε0sφ(s,θ1,θ2)
曖昧さが入ることを妥協し、値の適用箇所を省略すると
Eφ=22μ(2φs2+2sφs+1s2{1cosθ2θ2{cosθ2φθ2}+1cos2θ22φθ12})e24πε0sφ
ここでさらに
r:=sθ:=π2θ2ϕ:=θ1
と置き、φ とその関数にこの入力の変換を合成した関数とを同一の記号で表した上で形式的に式をいじれば
φr=φsφθ=φθ2φϕ=φθ1
より
Eφ=22μ(2φr2+2rφr+1r2{1cos(θ+π2)(θ{cos(θ+π2)(φθ)})+1(cos(θ+π2))22φϕ})e24πε0rφEφ=22μ(2φr2+2rφr+1r2{1sinθ(θ{(sinθ)(φθ)})+1(sinθ)22φϕ})e24πε0rφEφ=22μ(2φr2+2rφr+1r2{1sinθθ(sinθφθ)+1sin2θ2φϕ})e24πε0rφ