雑記帳
シュレーディンガー方程式から与えられた系での定常状態を求める方程式を誘導する。
(書きかけ)
シュレーディンガー方程式の解のうち、状態ベクトルが変化しない特別な解だけを調べる方程式を求める
定常状態 (stationary state)
シュレーディンガー方程式それ自体は、「与えられた系の量子状態の時間発展を記述する方程式」という見方ができるが、一方でその用途で直接シュレーディンガー方程式を解析する機会というのはそこまで多くないと思われる。
というのも、その用途でシュレーディンガー方程式を解きたくとも、第一に解析的に解を求めることが絶望的となる。(一番単純な「自由粒子の場合」でさえも特定の初期条件を適用した解を求める作業は一筋縄ではいかない。)
加えて「量子状態の時間変化の一般式」がわかったところで (面白いことには面白いが) 実用性を重視するのであればそこまでの一般性は必要にならず、一般式を求めるという大きな労力に見合ったうまみがそこまでないというのが実際のところになる。
具体的に、物理的に興味のある解というのは 定常状態 (stationary state) と呼ばれる「系が明確なエネルギーの値を持つ量子状態」である。
そしてその定常状態というものは、敢えて求めることが困難な一般式を経由しなくとも、大本のシュレーディンガー方程式を単純化した方程式を代わりに用いて求めることができてしまう。
これについてを以下確認していく。
定常状態が意味のあるものとして考察できる系
まずシュレーディンガー方程式は一般に次のような形で与えられる。
\[
i\hbar \frac{\partial \psi}{\partial t}(t) = (\hat{H}(t))(\psi(t))
\]
今考えたいことは、「状態ベクトルが時間変化しない特別な解 (定常状態にある解)」であるが、ハミルトニアン \(\hat{H}\) が時間変化してしまうような系に対してそういったことを考えること、即ち「系がそもそもとして非定常であるという状況の下で定常状態を考察すること」というのは話が支離滅裂としている。
ではそういった解が理に適ったものとして考察できる状況はどういったものであるのかといえば、もちろん「\(\hat{H}\) が時間変化しない場合」、つまり
\[
i\hbar \frac{\partial \psi}{\partial t}(t) = \hat{H}(\psi(t))
\]
という形の方程式によって量子状態の時間変化が記述される系がその状況に該当する。
解の形を制限する
- \(k\): 実数 (時間) から複素数を定める関数
- \(|a\rangle\): 何らかの定値の状態ベクトル
としたとき
\[
\psi(t) = k(t) |a\rangle
\]
という形をした解に興味があるということである。
これを方程式に代入すると
\[
\begin{align}
i\hbar \frac{\partial \psi}{\partial t}(t) &= \hat{H}(\psi(t)) \\
i\hbar \frac{\partial k}{\partial t}(t) \cdot |a\rangle &= \hat{H}(k(t) |a\rangle) \\
i\hbar \frac{\partial k}{\partial t}(t) \cdot |a\rangle &= k(t) \cdot \hat{H}(|a\rangle) \\
\frac{i\hbar}{k(t)} \frac{\partial k}{\partial t}(t) \cdot |a\rangle &= \hat{H}(|a\rangle) \\
\end{align}
\]
ここで、\(\frac{i\hbar}{k(t)} \frac{\partial k}{\partial t}(t)\) はスカラーより、それをベクトル \(|a\rangle\) に掛けても \(|a\rangle\) と線形独立なベクトルを新たに作り出すことはできない。
つまり上の等式が満たされるためには、\(|a\rangle\) と \(\hat{H}(|a\rangle)\) が線形従属であることが必要になる。
具体的に言い換えると、
\[
\hat{H}(|a\rangle) = \lambda |a\rangle
\]
と書くことが可能ということである。
ここで、\(\hat{H}\) は時間に依存しないため、\(\lambda\) も時間に依存し得ないということと、\(\hat{H}\) はエルミート作用素より、一般論から \(\lambda\) が必ず実数になることに注意。
纏めると、
\[
\begin{align}
\hat{H}(|a\rangle) &= \lambda |a\rangle \\
\frac{i\hbar}{k(t)} \frac{\partial k}{\partial t}(t) &= \lambda \\
\end{align}
\]
更に整理すると、次が得られる。
\[
\begin{align}
\psi(t) &= C e^{\frac{E}{i\hbar}t} |a\rangle \\
E |a\rangle &= \hat{H}(|a\rangle) \\
\end{align}
\]
状態ベクトルの成分に対する式に書き換える
前節で定常状態を求める方程式を求めたが、より使いやすくするためにそれを状態ベクトルの成分に関する方程式に書き換える。
ここでは例として、「スピンを考えない1粒子系」を想定して話を進めていく。
まず解 \(\psi(t)\) の形を書き換える。
\[
\begin{align}
\psi(t) &= e^{\frac{E}{i\hbar}t} |a\rangle \\
\langle [{\rm position}\colon\boldsymbol{r}] ,\psi(t) \rangle &= \langle [{\rm position}\colon\boldsymbol{r}] ,e^{\frac{E}{i\hbar}t} |a\rangle \rangle \\
\langle [{\rm position}\colon\boldsymbol{r}] ,\psi(t) \rangle &= e^{\frac{E}{i\hbar}t} \langle [{\rm position}\colon\boldsymbol{r}] ,|a\rangle \rangle \\
\langle [{\rm position}\colon\boldsymbol{r}] ,\psi(t) \rangle &= e^{\frac{E}{i\hbar}t} \langle \boldsymbol{r} | a \rangle \\
\end{align}
\]
ここで
\[
\begin{align}
C_{\psi}(\boldsymbol{r},t) &:= \langle [{\rm position}\colon\boldsymbol{r}] ,\psi(t) \rangle \\
C_a(\boldsymbol{r}) &:= \langle [{\rm position}\colon\boldsymbol{r}] ,|a\rangle \rangle \\
&(= \langle \boldsymbol{r} | a \rangle)
\end{align}
\]
と置くと
\[
\begin{align}
C_{\psi}(\boldsymbol{r},t) &= e^{\frac{E}{i\hbar}t} \cdot C_a(\boldsymbol{r}) \\
\end{align}
\]
続いて、状態ベクトル \(|a\rangle\) に関する方程式を書き換える。
\[
\begin{align}
E |a\rangle &= \hat{H}(|a\rangle) \\
\langle [{\rm position}\colon\boldsymbol{r}] ,E |a\rangle \rangle &= \langle [{\rm position}\colon\boldsymbol{r}] ,\hat{H}(|a\rangle) \rangle \\
E \langle [{\rm position}\colon\boldsymbol{r}] , |a\rangle \rangle &= \langle [{\rm position}\colon\boldsymbol{r}] ,\hat{H}\left(\int d\boldsymbol{r} \left\{\langle [{\rm position}\colon\boldsymbol{r}] , |a\rangle \rangle \cdot [{\rm position}\colon\boldsymbol{r}]\right\}\right) \rangle \\
E \cdot C_a(\boldsymbol{r}) &= \langle [{\rm position}\colon\boldsymbol{r}] ,\hat{H}\left(\int d\boldsymbol{r}' \left\{C_a(\boldsymbol{r}') \cdot [{\rm position}\colon\boldsymbol{r}']\right\}\right) \rangle \\
E \cdot C_a(\boldsymbol{r}) &= \langle [{\rm position}\colon\boldsymbol{r}] ,\int d\boldsymbol{r}' \left\{C_a(\boldsymbol{r}') \cdot \hat{H}([{\rm position}\colon\boldsymbol{r}'])\right\} \rangle \\
E \cdot C_a(\boldsymbol{r}) &= \int d\boldsymbol{r}' \left\{C_a(\boldsymbol{r}') \cdot \langle [{\rm position}\colon\boldsymbol{r}], \hat{H}([{\rm position}\colon\boldsymbol{r}']) \rangle\right\} \\
E \cdot C_a(\boldsymbol{r}) &= \int d\boldsymbol{r}' \left\{C_a(\boldsymbol{r}') \cdot \langle \boldsymbol{r} | \hat{H} | \boldsymbol{r}' \rangle\right\} \\
E \cdot C_a(\boldsymbol{r}) &= \int d\boldsymbol{r}' \left\{ \langle \boldsymbol{r} | \hat{H} | \boldsymbol{r}' \rangle C_a(\boldsymbol{r}') \right\} \\
\end{align}
\]
纏めると
\[
\begin{align}
C_{\psi}(\boldsymbol{r},t) &= e^{\frac{E}{i\hbar}t} \cdot C_a(\boldsymbol{r}) \\
E \cdot C_a(\boldsymbol{r}) &= \int d\boldsymbol{r}' \left\{ \langle \boldsymbol{r} | \hat{H} | \boldsymbol{r}' \rangle C_a(\boldsymbol{r}') \right\} \\
\end{align}
\]
【参考用】有限次元のベクトルを使って同様の議論を繰り返す
(..)
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