雑記帳
僕用勉強ノート 「圏論」の巻

圏論的な選択公理 (AC: Axiom of Choice)

選択公理 (axiom of choice)
定義
「圏 \(\mathscr{C}\) の中の全ての射について、エピックであるならば分裂エピックであることが従う」という性質を満たす時、その圏は「選択公理 (axiom of choice) を満たす」と言う。
一階の言語を用いてフォーマルに書くと、圏の公理を満たす理論が
\[ \forall f[{\rm isEpic}(f) \Rightarrow {\rm isSplitEpic}(f)] \]
を満たしているということである。
補足
「圏の性質」を謳っておきながら「公理」と名付けられていることについて補足しておくと、それは従来の公理的集合論でしばしば取り入れられる同名の公理を、圏論の言葉を使って翻訳したものであるためであることが考えられる。
ちなみに後々登場することになるが、圏を使った「集合の概念の公理化」を行う際にも、従来と同様、この圏論の言葉に翻訳した選択公理が公理の一つとして加えられることがあり、実際 (界隈では) 有名な公理的集合論の一つである ETCS は選択公理を公理の一つとして取り入れている。
そしてその時また触れるが、
  • 選択公理を満たすトポス (圏の一種) が持つ内部論理は排中律を満たす
というように、選択公理がトポスの内部論理に与える影響を圏論的に理解するのもまた面白い。
このように、選択公理は本来は
  • 集合の概念を公理的に定義する際にしばしば採用される公理の一つ
であったわけであるが、圏の言葉に書き換えたことによって
  • 圏の性質の一種
というように捉えることができる形になってしまった。
例えば非常にどうでもいいことだが、区間圏は「エピックでありながら分裂エピックでない射を持つ」ということから、選択公理を満たさないことが直ちに証明される。
タグ: 数学 圏論