雑記帳
高専数学 問題コレクション1

行列の問題 [2-2]

Aさん,Bさん,Cさんの3人でグラウンドに集まってあるしょうもないゲームをする。
まず、グラウンド上に一本の50メートルの長い直線を引き、その直線の中心点を基準点とし、その基準点となる位置に石ころを置く。
また、直線の一端に矢印マークをつけて、基準点からその矢印マークがついた直線の一端を向く方向が進行方向であると決める。
【ゲームの内容】
1. 3人が各々基準点付近の直線上の任意の一点に立つ。
2. 3人のそれぞれが基準点から進行方向に対して何メートル進んだ位置にいるのかを計測する。(進行方向とは逆向きの場合は距離にマイナス符号を付ける。)
3. 計測データを共有する。
4. 次の煩雑なルールのもと、3人全員が一挙に移動する。
・Aさんの移動先: \(a\) を4倍した位置を起点に、\(b\) を(-3)倍した値と \(c\) を3倍した値を加えた分を、そこから移動した先の位置。
・Bさんの移動先: \(b\) を3倍した位置を起点に、\(a\) を(-1)倍した値と \(c\) を(-2)倍した値を加えた分を、そこから移動した先の位置。
・Cさんの移動先: \(c\) を(-3)倍した位置を起点に、\(a\) を(-3)倍した値と \(b\) を4倍した値を加えた分を、そこから移動した先の位置。
但し、
\(a\): 次の移動先の計算時にAさんが基準位置から進行方向に対して何メートル進んだ位置に立っているか
\(b\): 次の移動先の計算時にBさんが基準位置から進行方向に対して何メートル進んだ位置に立っているか
\(c\): 次の移動先の計算時にCさんが基準位置から進行方向に対して何メートル進んだ位置に立っているか
である。
問1
Aさんの位置: 基準点から進行方向に1メートル進んだ位置
Bさんの位置: 基準点から進行方向に0.5メートル進んだ位置
Cさんの位置: 基準点から進行方向に1メートル戻った位置
であったとする。
この時、このゲームを二回続けて行った場合のAさんの位置は基準点から進行方向に対して何メートル進んだ位置にいるのかを求めよ。
問2
この移動のルールの前後で、誰のポジションも一切変化しないような特殊なフォーメーションを「Aさん,Bさん,Cさんがそれぞれ基準点から進行方向に向かって何メートルずつ進んだ位置に立っているのかの数値の組 \((a',b',c')\)」として一つ求めよ。
問3
問いで与えられている3名のポジションの移動のルールのもとで、移動前と移動後のポジションの組を記録していく。ここで、移動前後のポジションのそれぞれに対して「ある同じ決まった一つの移動のルール」を施すことでポジションの更新を行い、その更新された移動前後のデータのペアのリストを比べてみると、BさんとCさんが他の人のポジションとは全く無関係に自身のポジションだけから移動先を決定づけられるようにすることができる。
この時、その特殊な移動のルールを与える9つの数字 \(x_{11}\), \(x_{12}\), \(x_{13}\), \(x_{21}\), \(x_{22}\), \(x_{23}\), \(x_{31}\), \(x_{32}\), \(x_{33}\) を全て求めよ。
但し、移動のルールはその9つの数字を使って
・Aさんの移動先: \(a\)\(x_{11}\) 倍した位置を起点に、\(b\)\(x_{12}\) 倍した値と \(c\)\(x_{13}\) 倍した値を加えた分を、そこから移動した先の位置。
・Bさんの移動先: \(b\)\(x_{22}\) 倍した位置を起点に、\(a\)\(x_{21}\) 倍した値と \(c\)\(x_{23}\) 倍した値を加えた分を、そこから移動した先の位置。
・Cさんの移動先: \(c\)\(x_{33}\) 倍した位置を起点に、\(a\)\(x_{31}\) 倍した値と \(b\)\(x_{32}\) 倍した値を加えた分を、そこから移動した先の位置。
というように決められるものとする。
解答例
<未だ作ってない>
[ヒント]
■ 問1:
愚直に計算しても求まるが、変換行列Tを求めてその行列の2乗を作用させれば答えが求まる。
■ 問2:
このように問われているということは行列Tに固有値1の固有ベクトルが存在するということなので、実際にその固有ベクトルを適当に一つ求めればよい。
■ 問3:
単に行列Tを対角化する問題に読み取れるが、実際にやってみればわかるがTは対角化できず、Tの Jordan 標準形 \(PDP^{-1}\) を求める問題だったということになる。そしてPの逆行列 \(P^{-1}\) を具体的に計算した結果として得られるその行列の9つの成分がこの問いの答えとなる。
タグ: 数学