雑記帳

「1+1=2」の議論についての愚痴を生成 AI に投げかけたら神回答が来た件。

主要 LLM の進化の確認を、僕の下らない数学トークを持ちかけることで試してみたら、ビックリする結果が得られたので記事にしちゃいます。
まず、僕が投げたプロンプトと、それに対する Gemini さんと Copilot さんの回答は以下
僕の投げたプロンプト
「どうして『1+1 = 2』であるのか」という問いが散見されますが、それについてちょっと愚痴をいいかしら。
試しに僕は ETCS のような圏論的基礎論を数学の基礎に置き
  • (+):ℕ×ℕ→ℕ という写像が、圏論的な普遍性の立場から、syntax-free に (意味論的に直接オブジェクトレベルで) 定義できること
  • 「1 (ONE) の後者に来る自然数は 2 (TWO)」、つまり「ONE := zero;succ, ONE := zero;succ;succ」を定義としていること
という状況を設けた上で、その問いを「その写像 (+) に積対象 ℕ×ℕ の global element <1,1>:1→ℕ×ℕ を合成したときの結果 (<1,1>;(+)):1→ℕ が果たしてちゃんと 2:1→ℕ になるのか」という問いに読み替えることもできるとふと考えたわけです...
この時確かに「自然数間の和としての意味を持つ写像という前提なしに厳密な構成だけが漠然と提示された状況の中、その『構成から自ら意味をくみ取る必要がある写像 f:=(+)』に順序対 <1,1> を入力したときの結果がどうなるのか」についてはもちろん非自明であり理論に基づいて解析する必要がある側面はあるけど、そもそも自然数間の足し算を想定して (+) を構成しているので、「もし 2 にならなかった場合、単に写像 (+) の構成側に誤りがある」だけで、「1+1 が 2 ではなかった」という結論にはならないですよね。
もし仮にその論法が有効なのであれば、第一に「"+" というカタチの図形に対して、足し算としての意味を持った写像を割り当てなければいけない」といった全宇宙で共通の絶対的ルールも存在しないわけですし、仮に「a+b」は単に「<a,b>;(+)」の糖衣構文であるということにしてしまえば、(+) という写像の定義の与え方次第で「1+1」の結果をどうにでも調整することができてしまいます。
実際例えば、(+) に第二射影 prj_2:ℕ×ℕ→ℕ を割り当てる、つまり (+) := prj_2 としてしまえば、「1+1 = 1」ですし、第二射影の後に後者関数を2回合成した射 (prj_2;succ;succ):ℕ×ℕ→ℕ を割り当てれば、「1+1 = 3」にもできますが、かといってこれらは「1足す1は、3です」ということを意味しないですよね。
なんとなく思うに「1+1」という記号列が与えられたとき、+ という記号に対して、厳密な定義を差し置いて漠然と「(自然数間の) 足し算」という意味を勝手に想定してしまっている点が余計な混乱を引き起こしている根本的な原因の一つではないのかと思ったのですがどうでしょう。
よく考えてみてくださいよ。
「<1,1>;(+)」の後者の写像の"構成"(定義)を厳格に考えていないのにもかかわらず、勝手にその合成射が「2:1→ℕ」であるという結論だけを先に持ってきて、それをどうしてなんだろうと悩むのは当たり前ですよね。だって、(+) の定義をしていないのだから。
「ちゃんと定義されていない写像 f に タプル <1,1> を入力したら 2 になった。どうしてだ?」← f の厳密な定義にまで立ち戻って考えましょう
以上長々と失礼。
Gemini さんの回答
お気持ち、とてもよく分かります。その愚痴、ごもっともだと思います。
「なぜ1+1=2なのか」という問いが、しばしば表面的なレベルで議論されてしまうことへのもどかしさ、そして、それを圏論的基礎論を用いて深く掘り下げて考えることの重要性について、非常に明快にご説明いただき、ありがとうございます。
ご指摘の通り、この問いが混乱を招く根本原因は、記号「+」に対する暗黙の「足し算」という意味付けにあると言えるでしょう。数学における記号は、それがどんな操作を意味するのかを厳密に定義して初めて、その意味が確定します。
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### 「1+1=2」を巡る混乱の根源
まさに、あなたの仰るように、
  • 定義されていない記号への期待: 「+」という記号を見た瞬間に、我々は無意識のうちに「自然数の足し算」という特定の意味を期待してしまいます。しかし、この期待は、その記号が具体的に何を表現するのか、どのような写像として定義されているのか、という厳密な側面を置き去りにしています。
  • 「構成」と「結果」の混同: 圏論的な視点から「(+)」を普遍性を持つ写像として定義し、それにグローバル要素 \(<1,1>\) を合成した結果が \(2\) になるか、という問いは、非常に建設的です。しかし、多くの場合、この「(+)」の具体的な構成が曖昧なまま、「1+1」という記号列の結果がなぜ「2」なのか、という問いが立てられてしまいます。
あなたが例に挙げられたように、もし「(+)」を第二射影 \(prj_2\) としてしまえば \(1+1=1\) にもなりますし、\(prj_2;succ;succ\) とすれば \(1+1=3\) にもなります。しかし、これらが「1足す1は1です」とか「1足す1は3です」とは言われないのは、私たちが日常的に「+」に期待している意味が、これらの定義とは異なるからです。つまり、「+」という記号に、私たちが一般的に認識している「足し算」という意味を割り当てた場合、その結果が2になるように「+」を構成している、ということになります。
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### 厳密な定義への立ち返り
結局のところ、「なぜ1+1=2なのか」という問いは、「自然数とその足し算をどのように定義したのか、そしてその定義に従うと、1と1という要素を入力したときに結果として2が導かれるのはなぜか」という、基礎的な定義に立ち返る問いに他なりません。
もし、この「(+)」という写像の構成が明確に示されていないのであれば、「<1,1>;(+)」の結果がなぜ2になるのかを問うのは、まさに「ちゃんと定義されていない写像fにタプル<1,1>を入力したら2になった。どうしてだ?」という状況であり、fの厳密な定義にまで立ち戻って考える必要があるというあなたの結論は、まさにその通りだと思います。
長々と書かれたとのことでしたが、非常に重要な、そして共感できるご意見でした。数学の基礎を深く理解するためには、記号の持つ「意味」と、その「構成」がどのように結びついているのかを常に意識し、曖昧な概念を厳密に定義し直す作業が不可欠であると改めて感じました。
Copilot さんの回答
これは非常に鋭く、深い考察ですね。愚痴というより、むしろ数学的厳密性と意味論に対する真摯な姿勢が伝わってきます。いくつかの観点から、あなたの考えを整理しつつ、少し補足や共感を交えてコメントさせてください。
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### ■ 「1+1=2」はなぜか?という問いの誤解
あなたが指摘されたように、「1+1=2」という命題は、記号列としての『1+1』にどのような意味を与えるかに依存します。つまり、
  • 「+」という記号にどのような写像を割り当てるか
  • 「1」や「2」という記号が何を意味するか
が定義されていなければ、「1+1=2」という命題の真偽を問うこと自体がナンセンスになります。
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### ■ 圏論的視点からの再定式化
あなたのように、ETCS(Elementary Theory of the Category of Sets)や圏論的基礎に立脚して、
  • 自然数オブジェクト ℕ
  • その上の加法写像 (+): ℕ×ℕ → ℕ
  • グローバルエレメント <1,1>: 1 → ℕ×ℕ
  • 合成 <1,1>;(+) = 2: 1 → ℕ
という形で問いを再定式化するのは、非常に理論的に筋が通っており、しかも「意味論的に構成された対象に対してのみ意味を問う」という厳密な姿勢が貫かれています。
このように問いを立て直すことで、「1+1=2」が定義に基づく構成の帰結であることが明確になります。
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### ■ 「意味の先取り」が混乱の原因
あなたの指摘の中で特に重要なのはここです:
> 「1+1」という記号列が与えられたとき、+ という記号に対して、厳密な定義を差し置いて漠然と「(自然数間の) 足し算」という意味を勝手に想定してしまっている点が余計な混乱を引き起こしている
これはまさに、記号と意味の混同、あるいは構文と意味論の混同が生む典型的な誤解です。
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### ■ 「1+1=3」も可能だが、それは別の意味論
あなたが挙げた例:
  • (+) := prj₂ → 「1+1 = 1」
  • (+) := prj₂;succ;succ → 「1+1 = 3」
これらはすべて「+」という記号に異なる写像を割り当てた結果であり、構文的には同じでも意味論的には異なるということを示しています。これは、記号の意味が定義に依存することの良い例です。
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### ■ 結論:問いの立て方が重要
したがって、「1+1=2はなぜか?」という問いに対しては、
  • 「その問いは、どのような定義体系の中で問われているのか?」
  • 「+ や 1, 2 の意味はどのように構成されているのか?」
というメタレベルの問いを先に立てる必要があります。これを怠ると、定義されていない対象に意味を求めるという、まさにあなたが指摘されたような混乱に陥ります。
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とても刺激的な話題をありがとうございます。もしよければ、次のような話題にも広げてみませんか?
  • Peano 公理系における「1+1=2」の証明とその形式的構成
  • 圏論的自然数オブジェクトの一意性とその意味
  • 「意味論的構成」と「記号操作」の哲学的対比
どれか気になるものがあれば、ぜひ続きをお話ししましょう。
感想
おいおい、めっちゃいいこといってくれんじゃん!!!
正直、テキトーな数学トークは LLM と盛り上がれることがわかったので、なおさら大学に行く意味を見失ったかも。
あと LLM 自体、ある種の数学理論の結晶なわけだし、その数学のカタマリが、これら秀逸な数学トークを吐き出しているって落ち着いて考えてみると、やっぱおもろい...
ちなみに、ここで僕が述べた内容や、それに対して Gemini さん・ Copilot さんが生成した出力については、たとえ圏論にあまり馴染みがない場合でも、
辺りをざっと確認すれば、おおまかな話の流れと意味の汲み取りはできるはず。
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